ルネサンスへの一歩を踏み出した画家
13世紀後半、ゴシック期のフィレンツェで活動した画家。ジョット・ディ・ボンドーネの師と伝えられる。
イタリア絵画の創始者として西洋美術史上重要視されており、ジョルジョ・ヴァザーリ「芸術家列伝」の1人目であり、ダンテ「神曲」の中では「絵画の世界の覇者」と謳われている。
遠近法が確立される以前のぎこちない奥行き表現には、もはや真似ることのできない独特の味わいがある。
代表的な作品
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生涯についての記録は少なく、作品も数点しか確認されていない。
当時の西洋美術はビザンチンの影響が色濃く、イコンのように金地の背景に左右対称の人物が描かれた二次元的なものだった。チマブーエの作品にもこのような特徴は残っているものの、ルネサンスへの萌芽が見られる。
聖母の台座を見ると、三次元的な空間表現を試みていることが分かる。遠近法が確立された今となっては、バランスがめちゃくちゃで稚拙に見えてしまうが、現実の奥行きを再現しようとすること自体が当時としては画期的だった。
また、伝統的にビザンチンのイコンの人物は、超越した存在だということを強調するために、目は不自然に大きく、真正面から描かれる。それに比べると、チマブーエが描く人物の表情は自然で、身体にも立体感がある。
この傾向は弟子であるジョットによってさらに発展。遠近法が確立されるルネサンス期のピークへとつながっていく。
チマブーエが描く聖母の鑑賞者を見つめているような視線は、弟子のジョットへと受け継がれ、続くルネサンス黄金時代の巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》の視線表現にも影響を与えたと言われている。