アート

ファン・エイク兄弟

驚くべき細密描写を極めた油絵の創始者

ヤンとフーベルトのファン・エイク兄弟は、ともに15世紀の北ヨーロッパで活動した画家。兄フーベルトは若くして亡くなったため、一般的に「ファン・エイク」は弟ヤンを指す。

生涯ついてはいまだ判明していない部分が多いが、油彩画を完成に導いたとされる。

代表作「アルノルフィニ夫婦の肖像」は、見れば見るほど緻密な描写に圧倒される作品。油絵具の特性を見事なまでに生かしきっている。

写真がない時代にこの再現性がどれだけ重宝されたか想像しながら、細部まで観察してほしい。

代表的な作品

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ヤンは若い頃に写本を手がけていたと言われ、修行を終えてからは、宮廷画家として生涯恵まれた地位にいた。当時権力を持っていたブルゴーニュ公フィリップ3世に腕を高く買われ、画家としてだけでなく従者としての役割も与えられたのである。当時の記録によると、宮廷画家としても法外な高給をもらっていた。富裕層にとっても、ファン・エイクに絵を注文することはひとつのステータスだったと考えられる。

兄弟の合作「ヘントの祭壇画」は、もともと手がけていた兄フーベルトの仕事を、弟ヤンが引き継いで1432年に完成させた。これは宮廷の仕事ではなく、個人からの依頼によって制作された多翼祭壇画である。ギリシア・ローマの古典に見られる理想美ではなく、自然を忠実に再現する写実を追求した北フランドル絵画の最高傑作と言われる。

ファン・エイクが美術史上に残した大きな功績は2つ。

ひとつは絵画にサインと日付を描き入れたこと。今では当たり前のことだが、当時は例外的だった。ここから「サインをして作品完成」という慣習が生まれたのである。

もうひとつは油絵具の開発。16世紀にジョルジョ・ヴァザーリが記した『画家列伝』により、油絵具の発明者として知られるようになった。発明というよりも画材を改良して技法を確立したという説もあるが、いずれにせよ油彩画の祖と呼んでいいだろう。

それまで主流だったテンペラ画ではできなかった重ね塗りが可能になり、微妙なグラデーションや陰影を表現できるようになった。ファン・エイクが溶剤に使った油は40種類にものぼるとされるが、そのレシピはいまだ解明されていない。

さらに、肖像画を斜めから描いたのもファン・エイクが最初だとされる。「3/4」は、今でこそ顔が最も美しく見えるアングルとして知られているが、当時は特徴が出やすい真横からの肖像画が主流だった。

ヤンは1430年代、40代の時に結婚して子宝に恵まれ、家族が精神的な支えになったのか多くの傑作を生み出した。しかし1441年、働き盛りで生涯の膜を閉じる。

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